2024年の国家試験問題を見ていただいた上で、
なぜ筋学を中心に神経・骨・取穴講座を春に開くのか(なぜ春に受講した方がいいのか)について解説していきます。
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このブログでは、国家試験をふまえて、以下の内容を解説していきます。
- なぜ筋学を中心とした神経・骨・取穴講座を開くのか
- なぜこの時期(春)に開講するのか
- なんと!柔道整復師向けの問題が出題されていた
- 運動学から経穴をみた問題が多く出題されている
- 基礎固めのない方は国試前に苦労することがあります
なぜ筋学を中心とした神経・骨・取穴講座を開くのか
こちらの問題を解いてみて、いかがでしたか。
今回の問題は、2024年第32回あんまマッサージ指圧国家試験・鍼灸国家試験問題から抜粋したものです。そして抜粋した問題こそ、今回の運動学を中心とした春季講座の内容と合致しているのです。
この講座だけですべての内容を理解しきれるわけではありませんが、この講座を受けて、ここで得た解き方・知識を使えば、運動学や整形外科的疾患、経穴の問題を解くカギを手に入れることができます。
いままでの国家試験は、骨・筋系の問題は少なかったですが、今回は多いように感じます。
またその問題は、単純な問題などでなく(たとえば筋の起始を答えるだけの問題ではなく)、検査学が加わったり、筋の支配神経・および神経の走行が加わったりと複合問題のていをなしてきています。
おそらく今回の試験問題は、柔道整復師の免許をお持ちの鍼灸師さんが作られた問題ではないかと想像できます。このような問題が全体の一割以上を占めていることは、抜粋した問題を解いてみるとおわかりいただけるのではないでしょうか。
問題7・8「 3 歳の女児。滑り台から落ちて右手をつき、右肘過伸展を強いられ受傷。近医を受診、右肘部変形があり、肘部前面の皮下出血と示指・中指のしびれが認められた。」
問題 7 最も考えられる診断はどれか。(鍼灸 各論)
1. 上腕骨外科頸骨折 2.上腕骨骨幹部骨折 3.上腕骨顆上骨折 4.上腕骨外顆骨折
解答 3
問題 8 最も考えられる障害神経はどれか。(鍼灸 各論)
1. 腋窩神経 2.正中神経 3.筋皮神経 4.尺骨神経
解説 2
こちらの「3.上腕骨顆上骨折」は柔整ではかなり詳細に習いますが、鍼灸ではあくまで紹介程度にしか触れません。しかし、今回の試験のように柔整問題が出されているのも事実です。そこで、このような問題にも対応できる知識、対応力を身に着けることが大切になります。
この問題を含め、運動学を中心とした問題に対応できる基礎を築いていくのが、春季講座です。
運動学から経穴をみた問題が多く出題されている
運動学から経穴を見た問題も多数出題されています。
問題11 腋窩壁を構成する筋上にあるのはどれか。 (鍼灸 経穴)
1.魂門 2.風門 3.幽門 4.雲門
解説 4
この問題は、解剖学でもよく出てきている腋窩を構成する筋を上げており、その筋上にある経穴を答える問題です。
腋窩は、前壁を大胸筋・小胸筋、後壁を広背筋・大円筋、内側壁を前鋸筋、外側壁を上腕骨で構成されます。
問題11で、前壁の大胸筋・小胸筋の上に経穴があるのは雲門穴となります。
腋窩の前壁を個性する大胸筋・小胸筋、そしてその筋の上にある経穴を答えなくてなりません。
さて次の問題を見てみましょう!
次は臨床論でよく出題される、連続問題です。
問題15・16「45歳の女性。職業は美容師。主訴は右上肢全体の持続的なだるさ。腱反射は正常。ライトテストは陽性。ジャクソンテスト、アドソンテストはともに陰性。」
問題 15 病態について最も適切なのはどれか。
1. 血流障害はない。 2.握力低下はない。3. 髪をカットする姿勢で症状誘発。 4.空を見上げると症状誘発。
問題 16 罹患筋への局所治療を行う場合、適切な経穴はどれか。(鍼灸 東洋臨床)
1. 中府 2.肩外兪 3.巨骨 4.扶突
問題15 解答 3
問題16 解答 1
- 上肢に損傷などはないものの、しびれなどの自覚症状がある場合、まず疑うのが、頚髄症・頚椎症・胸郭出口症候群など
- ジャクソンテスト、アドソンテストはともに陰性で腱反射は正常ということは、頚髄症頚椎症・頸部神経根障害の可能性が低い
- ライトテスト陽性・上肢にだるさがあれば、胸郭出口症候群の一つの過外転症候群(小胸筋症候群)の可能性が疑われる
- ライトテストは肩を過外転する肢位で誘発されるので、ここでは2の動作が該当
胸郭出口症候群では血流障害と上肢のだるさ・上肢に力が入りにくい・しびれなどがみられ、胸郭出口症候群の一つの過外転症候群(小胸筋症候群)の可能性が疑われるので、ポイントとする治療筋は小胸筋となります。問題16で小胸筋上にある経穴は中府穴となります。
今回の問題はテストの陽性・陰性において、胸郭出口症候群の過外転症候群を割り出し、さらに小胸筋を引き延ばされる動き(例:髪をカットする姿勢)を想像できなくてはなりません。その上でその小胸筋の上にある経穴を中府穴を言い当てる問題になります。
複合的に問われてますが、それぞれのテストの意味や小胸筋の働き、経穴の位置、それぞれの筋と経穴との関係がわかれば解ける問題になります。
このように、特に鍼灸の分野での難易度があがってきているのがわかりますね。
また次の問題では、筋学の難易度が上がっていきていることがわかります。
問題13 次の文で示す症例で拘縮がみられる可能性が最も高い筋はどれか。
「68歳の女性。変形性股関節症による左股関節痛があり、トーマステスト陽性。 恥骨結合下縁の高さで縫工筋のすぐ外方陥凹部にある筋に顕著な圧痛がある。エリーテスト陽性。」(鍼灸 東洋臨床)
1. 大腿筋膜張筋 2.大腿直筋 3.長内転筋 4.恥骨筋
解説 2
トーマステストは股関節屈曲拘縮を疑うテストで、主に股関節屈曲の主力筋の腸腰筋・大腿直筋・縫工筋の拘縮を疑う(しかし1~4の筋はすべて股関節屈曲にかかわるのでこのテストだけではまだわからない)
次に、恥骨結合の高さでは縫工筋のすぐ内側に、「4.恥骨筋」、「3.長内転筋」と並び、縫工筋のすぐ外側に「1.大腿直筋」またその外側に「2.大腿筋膜張筋」と並ぶエリーテストは大腿直筋の拘縮を見るテストになります。
このテストは、エリーテストがわからなくても、1~4の筋の走行がわかれば答えられる問題なので、やはり筋の走行・作用は重要ですね。
さて、このような問題は筋の作用や検査テストの意味、そして筋の配列をビジュアルで理解しなくては解けない問題です。
筋も検査も意味と役割を知って考えればそれほど難しくない
そのためには、問題を置くための基礎的知識が何より大切になるのです。それがこの時期に運動学を中心として春季講座を開くわけになります。
それを詳しくお話していきましょう。
なぜ春に筋学を中心とした神経・骨・取穴講座(春季講座)を開くのか
どうしても1年次学んだ解剖学(特に運動学)は抜けがちになるが仕方がない
この講座は、実は去年は夏休みに開いておりました。かなり充実した講座であったと自分でも感じています。
ただ、正直な話、講座をおこなった当初は、運動学をはじめ解剖学系は多くの学校では1年次のみ学んでいることが多く、特に運動学や筋・骨に関しては忘れておられる方が多かったように感じます。
教えてきた学校側も、学んでこられた学生も、勉強をおろそかにしていたのではありません。鍼灸の勉強は非常に範囲が広く、3年間で学ぶ量が膨大だからです。だから忘れてしまうのは無理はないと感じています。
運動学を中心とした問題が解剖学・リハビリ・東洋臨床・臨各・経穴に多く出題
先ほどあげたように、運動学を中心とした問題は多く出題されました。だからこそ春期講習から始めていこうと思ったのです。
そして運動学を中心に解剖学・リハビリ・東洋臨床・臨各・経穴に多く出題されるということは、まずその基礎をしっかり今の内に学び直さなくてはなりません。
夏休みを越し、国試半年前にもなれば、過去問を中心に得点率の高い臨床系を中心に進めていかなくてはなりませんから、今が基礎をしっかり固める時なのです。
基礎固めのない方は国試前に苦労することがあります
これは、多くの方の国家試験対策を担当してきたから、言える事です。
学生さんの多くは働きながらや家庭のことをしながらの方がほとんどでしょう。そして学校の勉強、3年生なら就活、これに加えて国家試験が加わるのです。
それをよくお考え下さい。
国家試験に受かるためだけでなく、体調を崩さずに普段の生活も維持しながら国試に合格するためにも、国家試験対策も計画的に進めていきましょう!
この講座では、国家試験にあたっての計画についてもお話できればと思っています。